Googleは落ち込み、FacebookとAmazonは微増
eMarketer は2020年6月22日、米Googleの2020年のデジタル広告売上が前年対比で5.3%減少の395.8億ドルとなる見込みだと発表しました。これは2008年に eMarketer が統計を開始して以来同社にとって初めての落ち込みとなるようです。
(それ以前に Google が落ち込んだ年はなかったはずなので、事実上初めての減少ではないかと)
リンク:» Google’s US Ad Revenues to Drop for the First Time eMarketer Newsroom
なお、Facebook と Amazon は従来の予想と比較すると伸び幅はゆるやかになりましたが、それでも引き続き成長基調とのこと。
そのため、以下の表のように市場シェアに若干の変化が起こりそうです。
Googleの売上が減少予測となったことで、米国内のデジタル広告市場における Google のシェアは29.4%となり、2019年の31.6%から2.2ポイント減る見込みになっています。
一方の Facebook は Instagram の成長が牽引し、前年比4.9%増加の314.3億ドルになるとのこと。シェアは、前年の 22.7% から 23.4% に上昇します。
Amazon は引き続き大幅な増加基調で、2020年の広告売上は前年比23.5%増の127.5億ドルを見込んでいます。シェアも7.8%から9.5%へとジャンプアップする見込みとのこと。
米国全体のデジタル広告市場規模は1.7%増の1,436億6千万ドルになりますが、メジャー3社(Triopoly)のシェアはわずか0.2ポイント(%)しか伸びないため、成長率については他のプレイヤーに主役を譲ることになります。
旅行業界が壊滅的。小売では明暗が分かれる結果に
Google のブレーキ要因の多くは、パンデミックによる旅行業界への深刻なダメージが起因しています。2020年3月以降、旅行業界は広告費がほぼ凍結されていますが、同業界は比較的クリック単価が低いため、結果として広告費における検索連動型比率が高く、メジャー3社の中で Google が最も影響を受けたと考えられます。(Amazonは旅行分野ではダメージがほぼゼロ)
なお、業界別では最大規模を誇る Retail(小売)の広告費も旅行と同様に抑制されていましたが、Google にとって最大の競合かつ最大の広告主でもある Amazon はコマース需要が急騰したため Google への広告出稿を停止していた期間が長く続きました。
その結果、Google は広告収入が減り、Amazon はコロナ特需で広告費をかけずとも売上が急増。メーカーを中心に Amazon への広告出稿も増えたことで2者の差は急速に縮まりました。
コロナが両者の明暗を分けたと言っても差し支えないと思います。
動画は伸びるが次のチャレンジが必要
Google は Amazon への対抗策としてショッピング広告で大きな改革を進めていますが、やはりじわじわと差が詰められているのは事実です。
そして、別の成長ドライバーである YouTube はロックダウン下のテレビ画面での視聴の急増とも相まって成長を続けていますが、以下の記事でも触れたように、テレビ画面ではまた別のチャレンジが待っています。
参考:コネクテッドTVの未来にGoogleの居場所は残されているのか? 〜テレビ用新デバイスの登場から考える
今後、YouTubeが検索の成長率低下を補完できる存在になるかどうかは、広告プラットフォームとしての成長以外にも、ハードウェアを含めた総合的なチャレンジが待ち受けています。
2020年後半にどのような変化があるのか、個人的にも最も注目している分野です。引き続きウォッチしていきたいと思います。
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