Chromeでの 3rd Party Cookie のサポートが段階的に廃止
2020年1月14日、Googleは Chrome での 3rd Party Cookie サポートを段階的に廃止する予定だと発表しました。目標を2年以内と置いていますので、2021年末頃が目処でしょうか。
リンク:Building a more private web: A path towards making third party cookies obsolete
今後は 3rd Party Cookie の代替として、2019年の夏に公開されたプライバシー保護を目的とした API である Privacy Sandbox を通じてトラッキングやターゲティング機能を補完していくようにしたいとのこと。
Privacy Sandbox を外部のベンダーが活用するための具体的な機構としては、Chrome(ブラウザ)側で情報を取得し、サードパーティのベンダーはその情報の同定のために Privacy Sandbox へ APIコールを行うことで(ユーザー情報を除いた状態で)コンバージョン等のトラッキングを実現させる仕組みを提案しています。
以下は上記の記事からの引用ですが、
Some browsers have reacted to these concerns by blocking third-party cookies, but we believe this has unintended consequences that can negatively impact both users and the web ecosystem. By undermining the business model of many ad-supported websites, blunt approaches to cookies encourage the use of opaque techniques such as fingerprinting (an invasive workaround to replace cookies), which can actually reduce user privacy and control. We believe that we as a community can, and must, do better.
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一部のブラウザは3rd Party Cookie をブロックすることでこれらの(ユーザーのプライバシー周りの)懸念に対応しましたが、我々はこれにより、ユーザーとウェブのエコシステムの両方にとって意図しない悪影響をもたらす可能性があると考えています。広告によって支えられてきた多くのウェブサイトのビジネスモデルを破壊していくことは、フィンガープリントのようなCookieを置き換えるための不透明な回避策の利用を奨励することにつながります。私たちは、コミュニティとして、よりよい方法を模索することができるはずですし、模索しなければなりません。
From:Building a more private web: A path towards making third party cookies obsolete
一部のブラウザ、つまり Apple の Safari が採用したプライバシー保護の仕組みである ITP(Intelligent Tracking Prevention) をほぼ全面的に否定するもので、Privacy Sandbox の推進によってプライバシーと広告のエコシステムを両立させ、事実上の業界標準を目指す態度を改めて表明したともいえると思います。
エコシステムを維持するための Privacy Sandbox
Chrome はウェブブラウザでは最大規模のシェアを誇りますので、3rd Party Cookie の活用ができなくなると広告のターゲティングやコンバージョン測定に至るまでのほとんどのマーケティング活動に不具合が生じます。
特にコンバージョン測定はデジタルマーケティングの効果を表現するもっとも分かりやすい方法のため、Privacy Sandbox はコンバージョン測定の解決に最優先で取り組むと表明しています。繰り返しですが、コンバージョンは 3rd Party Cookie ではなくブラウザ内で計測されますので、広告主はブラウザからコンバージョン値を送信するAPIをコールすることになります。(その際に個々のユーザーデータは返されません)
また、Privacy Sandbox を通じたコンバージョン測定と、リターゲティングのような興味関心に連動するインタレストベースの広告は仕組みは(これまでは同じような感じでしたが)今後は若干違うものになっていくと考えられます。GDPR の開始時からすでに、Google はターゲティングの情報として重要な役割を占めていた DoubleClick ID の利用を制限していますので、既にさまざまなトライが行われているのでしょう。
リンク:Google Sharply Limits DoubleClick ID Use, Citing GDPR
ターゲティングの精度向上は、広告主のようなデマンドサイドだけでなく、広告枠を持つサプライサイドの収益にも影響します。2019年8月、Google は 「3rd Party Cookie を削除するとパブリッシャーの広告収益が52%減少する」という調査結果(PDFはこちら)を発表していますが、この発表の意図からも、3rd Party Cookie に代わるターゲティングの精度向上は、Google のディスプレイネットワークというエコシステムの維持のために不可欠だと認識していることが伺えます。
改めて浮かび上がる 1st Party Cookie の優位性
長く運用型広告/プログラマティック広告を屋台骨として支えてきた 3rd Party Cookie の寿命が近づいてきている一方で、Google のお家芸である検索(google.com)と動画(youtube.com)における広告ビジネスは 1st Party Cookie として実行されるため、実はほとんど影響を受けないはずです。
そういう意味で、今後はオーディエンスの基礎設計自体が検索や動画とディスプレイ広告とで違ってくるということでもありますし、GMP(Google Marketing Platform)が、DoubleClick時代のような統合管理やデータ精度の向上を標榜するのではなく、動画やプランニング等に力点を置いてリブランディングした背景にも通じるものがあります。
広告のビジネスモデルを支える技術的基盤は、プライバシー保護という側面から急速に大きな変革期を迎えています。それはひるがえって、1st Party Cookie によって「当該サービスでデファクトを取る」ことの重要性を再認識させているのかもしれません。
今後、プラットフォーム以外のサードパーティプレイヤーはどのような選択肢をとるべきなのか、いろいろと考えさせられる事案です。
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