AdMarkeTech. Monthly 2019年3月/March 2019
毎月のニュースをまとめて取り上げる【AdMarketech. Monthly】。
ブログで取り上げなかった(単に筆力が足りなかった)ものの、注目に値する記事をかんたんなコメント付きでご紹介します。
2019年3月もたくさんのニュースがありました。 気になった方はリンク先もぜひご一読ください。
-検索関連-
▶Google showing image thumbnails in mobile search results snippets more often - Search Engine Land
モバイルでの自然検索結果の画像表示が、2019年3月7日以降に増えていたらしい、という記事です。
スマートフォンで検索結果を視認するたびに、「オーガニックではサムネイル画像がどんどん増え、そうでなくてもアンサーパックやナレッジパネルがひしめき、広告ではショッピング広告をはじめとした業種別機能の表示がどんどん目立ってきている中で、一般キーワードでのテキスト広告で1位を目指そうとする意味って一体なんだろう…」と思ってしまいますね。
▶How To Write Excellent RSAs | PPC Hero
「イケてる動的検索広告の書き方」という記事でした。
動的検索広告の結果がどう出るかは、それまでの広告文の結果や広告グループのターゲット次第で評価が変わってしまうように思いますが、記事中にある以下の2つの指針には概ね同意です。
・「長いコールアウト」のように書け
・会社説明で使うような、曖昧でフワッとした表現を試せ
曖昧でフワッとした表現は、抽象の段階を一つ上げないといけないので、つくっている途中で「これでいいのかな…?」と不安になってしまいがちですが、「無料!」「○件以上!」「キーワードとの一致!」と血眼になるよりも、伝えたい意図をギュッと絞った語彙に込める努力は、結果としてクエリ(≒検索者の意図)と合いやすくなるのではないかと思います。そのあたりも、スマート自動入札と組み合わせることで学習が進むということなのでしょう。
個人的には、Branded Term を狙った広告グループでだけは、RSAはあまりメリットがないと思っています。(これも「クエリ=ユーザーの意図」で説明がつきます)
-Eコマース関連-
▶How retailers can survive Amazon's stronghold in Google search - Search Engine Land
検索結果におけるアマゾンの存在感をどう理解するか、という記事でした。この場合の検索結果はGoogleを指しています。
広告のオークションでEコマースの巨人と競合している場合、管理画面で見れる各指標を普通の競合と同じ感覚で捉えてもミスリードもしくは絶望してしまうだけなので、冷静になりましょうと説いています。
実際、巨人と一般企業では、リソースがフリーザと桃白白くらいの差がありますので、インプレッションシェアは低くて当たり前です。プラットフォームの営業は「インプレッションシェアを高めましょう」と煽ってくることがありますが、あれは RPM を高めるためにカバレッジを広げたいという意図によるものですので、自社の予算と相談し、冷静に判断してください。
なお、購買ファネルの上部は、仮に検索キーワードでがんばったとしても実際の検索結果ではショッピング広告の方が有利ですし、そもそもキーワード×テキスト広告はクリック単価が高すぎてつらみが増すだけですので、今ならデータフィードやオーディエンスリストに注力した方がよさそうです。
そう考えると、Merkle社が四半期ごとに出しているレポートで、EC系企業のNon-Brandクエリ由来のインプレッションの大半がショッピング広告なのは、誇張でもなんでもなく、広告主が賢く動いている結果といえますね。(参考:▶ショッピング広告の安定成長と、アマゾンAMSの急伸 〜Eコマース向け運用型広告は2強時代へ)
▶Visual ads on Google Images
2019年は年初からショッピング関連のリリースが多かったですが、これはその上半期の極めつけ、という感じでしょうか。
↓で紹介している Instagram Checkout と似ていますが、Google は以前にも似たようなことはテストしてますし、YouTubeでは既にリリース済みの機能ですので、Google Merchant Center の無料化(日本はまだ未定)とセットで考えると、どういう場所での競争なのか、Google、Facebook双方の狙いがよく分かるのではないかと思います。
…というわけで、手前味噌ですが、こちらの記事もご参考ください↓
▶What does Instagram Checkout mean for ecommerce? We ask the experts – Econsultancy
Instagram Checkoutが発表されました。これで、ブランドが自社の資産と販売の外部化のバランスとに悩むことが増えそうですね。
記事中にある
It may shrink social traffic to the retailer’s website but I think most retailers will accept that if the ROI model works.という意見には納得しますが、一方で、こちらの記事にあるように、
(これによって小売サイトへのソーシャル経由のトラフィックは減るだろうけれど、費用対効果が見合っていれば、ほとんどの小売業者はそれを受け入れるだろう)
The inability to own customer experience, as well as customer relationships themselves, is arguably a huge price for brands to pay.という、既に大きなイシューとなっているブランドの苦悩(プラットフォームと自社のバランス)が端的に示されています。 Instagramは、Amazonと違って単なる販売チャネルとしてでなく、ブランドコンテンツとしてユーザーとやり取りができるからこそ、余計に悩ましいですね。
(顧客体験、および顧客との関係性自体を手放すことは、ブランドが支払う大きな代償となります。)
-インハウス関連-
▶Should you in-house or outsource paid search? – Econsultancy
運用型広告をインハウスにするか外注するか? という、よくある議論の記事ですが、全方位を意識した網羅的なレポートよりも、導きたい結論がはっきりしていて好感が持てました。
曰く、
「広告プラットフォームに関しては、どのモデルであっても、しっかりと透明性を確保するために"データの所有権"と"商業上の取り決め"の両方を常に管理できるようにしておくこと。その上で、どのモデルを採用するかは、財務状況と、各モデルのプロコンを考慮して決めましょう」
「アドテクという分野は、ほとんどの場合アウトソーシングされるべき。自社で仕組みを構築するなんて費用対効果が悪すぎる。世の中にはたくさんの有料ツールがあり、多くの場合、自分で作るよりはるかに安く解決策に近づくことができるのだし、それらを日々使っている外部の代理店やベンダーがいるわけなのだから。」
ということでした!
なお、またもや手前味噌ですがインハウスについてはこちらの記事もご参照ください↓
▶Why Fintech Will Be The Agency Model Of The Future | AdExchanger
かなり面白い記事でした!
前半だけでも(ものすごくざっくり)まとめると、
「インハウス流行っとるけど、忘れとるか? この5年はずっと好景気やったんやで。不景気になって広告宣伝費が減ったら、相対的にインハウスは高く見えるんでまた潮目は変わる。歴史は繰り返すんや。」
ということです。切れ味が尖すぎて、思わず関西弁で脳内再生してしまいました!
★今月のホットトピック★
▶Googleもついに、ファーストプライスオークションを採用:移行に頭を悩ますバイヤーたち | DIGIDAY[日本版]
Google Ad Manager(旧DFP)で、ファーストプライスオークションを採用するというニュースです。元ネタはこちらです→(Simplifying programmatic: first price auctions for Google Ad Manager)
Header Bidding の登場以降、セカンドプライスオークションを維持してきたGoogleには強いプレッシャーがかかっていましたが、今回は周りに合わせた、というかたちでしょうか。
今のところ対象が Google Marketing Platform 経由の取引のみなので影響範囲は限定的ですし、Google はおそらく Bid Shading のアルゴリズムや予測モデルを磨いてきたうえでの今回の発表だと思いますので、ファーストプライスでも十分に勝てるということなのでしょう。
むしろ、データ量と品質計算では他より上をいく Google ですので、今回の変更によって他の DSP はほぼ Google に勝てる領域がなくなってしまったのではないかなと思いました。
予約型や一部のプレミアム取引以外の中堅在庫では、外部のネットワークがGoogleに太刀打ちできなくなると、結果的に「AdSense←→Google Ads」間の排他性、つまり Walled Garden をさらに増長させる結果になるような気もしています。
以上、今月の【AdMarkeTech. Monthly】でした!
なお、毎週のニュースは【AdMarkeTech. Weekly】としてFacebookページにアップしています。よろしければご覧ください。
それでは、来月もお楽しみに^^
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