Googleショッピングのオーガニックリスティング
2019年2月22日、Google は公式ブログの中で、ショッピング関連サービスについて幾つかの重要な変更を発表しました。
リンク:Official Google Webmaster Central Blog: Help customers discover your products on Google
記事の中にはその時点で既にリリース済みのもの(Manufacturer Centerの新機能追加など)も含まれていましたが、そのさらっとした記事のトーンとは裏腹に、発表の中身は非常にインパクトのある内容になっていました。
大雑把にまとめると、以下の3点になります。
1.Search Console(サーチコンソール)に新しい製品レポートが追加
構造化マークアップを使用して製品情報に提供しているサイトでは、新たにサーチコンソールで「Product(製品)」レポートが利用可能になりました。製品のマークアップに関する問題に絞って確認できるほか、再クロール申請等も可能です。
2. Merchant Center(マーチャントセンター)
これまではマーチャントセンターとGoogle広告のショッピングキャンペーンはお互いが実施の必要条件でしたが、今後は広告を出さずとも Merchant Center が使用でき、アップロードされた商品データフィードがGoogleショッピングの検索結果に反映されるようになります。また、検索のみならず、Google画像検索の結果にもマーチャントセンターのデータが利用されることになるようです。(2019年2月末時点では米国のみ)
3. Manufacturer Center(マニュファクチャラーセンター)
メーカー専用のデータベースであるマニュファクチャラーセンターに、ブランドの認知度を高めるような新機能が導入されています。
※2019年1月発表→Help influence and understand how your products appear on Google
上記でもっとも注目を集めたのは、「2. Merchant Center(マーチャントセンター)」の、”今後は広告を出さずとも、アップロードされた商品データフィードがGoogleショッピングの検索結果に反映される” という部分です。
これまでは、広告を使用せずに Google のプロパティに商品情報を表示するには、構造化マークアップを商品ページに追加し、適切にインデックスされる必要がありました。今回の発表により、今後は広告の利用有無に関わらずすべての小売業者がマーチャントセンターを利用可能になるため、クローリングを待たずとも商品情報を Google へリアルタイムに送信できるようになります。
(もちろん、サーチコンソールも改良されたので構造化マークアップであっても以前より管理がしやすくなりました^^)
関連性の高さと、一貫した審査がますます求められる
今回のアップデートは、広告を利用できない事業者でもマーチャントセンターのメリットが享受できることを意味します。
これまでよりもはるかに多くの事業者が Google のプロパティ上で商品情報を展開できるようになりますので、利用する一般ユーザーにとっても、今まで隠れていた選択肢が見えるようになる可能性が高くなります。適切に拡大していけば、ユーザーにとっても事業者にとっても有益な更新になると考えられます。
適切な拡大のためには、「利用シーンとの関連性」があってユーザーにとって便利であることと、「製品情報の審査」が適切に行われることで、ユーザーにとって不便が起きず、プラットフォームの信頼性が担保されている状態の2つが必要です。
「利用シーンとの関連性」については、今回のリリースで以下のように改めて言及されています。
This product information will be ranked based only on relevance to users’ queries
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製品情報はユーザークエリとの関連性のみに基づいてランク付けされます
つまり、Googleショッピングでのリスティングについては、広告にどれだけお金を払ったかではなく、クエリとの関連性がすべてだと公言しています。
もちろんそれだけでは(利用者の拡大を一旦無視すれば)既存広告主のインベントリが圧迫される可能性が出てくるため、関連性が比較的高い画像検索への展開に加え、2019年3月には Shoppable Image Ads という、画像内に Merchant Center のデータを利用してそのまま購入までの動線を作成する広告をリリースしています。
リンク:Visual ads on Google Images
併せて、現時点では特定の国に限られますが、ショーケース広告(Showcase Shopping Ads)という広告主にしか使えないフォーマットも徐々に浸透してきていますし、今回のリリースでも推しています。これはつまり、オーガニックとの差別化は、広告在庫やマッチング方式ではなく、クリエイティブであるという方針が明確に示された、と捉えることができるのではないでしょうか。
一方の「製品情報の審査」は、はまだまだ課題が多いとされている箇所です。特に、審査の一貫性や、ポリシー違反の広告がそのまま通過してしまっている例は、筆者の周りでも頻繁に指摘されています。
Googleプロパティの信頼性の担保が、コマース関連サービス(に限りませんが)の拡大への重要な要素であるという認識はあるはずですが、現状はそれがしっかり履行されているとは(少なくとも日本国内では)思えない状況が続いています。昨今の透明性の議論の多くは審査の精度と密接に関係していますので、引き続き向上を期待したいですね。
商品情報をめぐる争いの激化と、データフィードの重要性
2018年にはアメリカのEコマース市場の約半分を占めるまでになった小売の巨人 Amazon は、今や Google にとって(小売の)広告分野でも最大のライバルとなっています。
参考:Amazon Now Has Nearly 50% of US Ecommerce Market - eMarketer Trends, Forecasts & Statistics
既に商品検索のポータルと化している Amazon に対抗(あるいは共存)するためには、今まで以上に開かれたオープンウェブとして商品検索や購買体験の入口となることが Google には必要になってきます。そのためにも、幅広い商品情報を適切にインデックスし、Amazon以外の販路が必要なブランドを支援していく仕組みの構築は急務だったのでしょう。
今回のマーチャントセンター無料化への舵切りは、巨人同士の商品情報をめぐる争いの激化を象徴するような出来事に見えます。
そうなると、ますます商品データフィードの活用が重要性を増してきます。既にオーガニックリスティングが可能になっている以上、Eコマースでマーチャントセンターを使わない理由がなくなりますので、企業のプロモーションの優先順位としても今後は上がってくると思われます。
構造化データも含め、商品情報というアセットの最適化が(これまでも重要でしたが)今後ますます注目されてくるのではないでしょうか!
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