YouTubeが検索パートナーの一員に
Google の検索連動型広告のパートナーに、YouTubeが追加されるようになりました。
参考リンク:
Googleは、2019年1月30日に San Jose で行われたカンファレンス「SMX West」の中で、検索連動型広告のテキスト広告が YouTube に拡張できるようになったと発表しました。
これにより、今後はGoogle広告の検索キャンペーンで「検索パートナー」をオンにしている場合、ユーザーがYouTubeでそのキャンペーンに関連するキーワードを検索すると、テキスト広告が表示される可能性があります。(デフォルトの設定では、「検索パートナー」はオンになっています)
Googleのヘルプでも、既に記載が更新されています。
検索パートナーを使用すると、YouTube などの Google のサイトのほか、Google 以外の数百ものウェブサイトも Google 検索広告の掲載対象となります。※太字は筆者による
-
検索パートナー - Google 広告 ヘルプ
この手の新しいオプションはクローズドβテストを経てから公開されることが通例ですが、今回もYouTubeはこの拡張を数ヶ月間テストした上で公表しました。
Googleの動画広告のプロダクトマネージャ Amy Vaduthalakuzhy は、そのテスト期間中にYouTubeモバイル検索結果上のテキスト広告が、コンバージョン単価ベースで Google の通常の検索連動型広告と同等の成果を上げたと述べたあと、次のように語っています。
“This tells us that, even in a video context, text ads shown to the right person at the right time, matching the right intent, can be really effective at driving conversions,”
-
これは、動画視聴の場面であっても、適切なタイミングで適切な人に表示されるテキスト広告であれば、コンバージョンの促進に非常に効果的であることを示しています。
実際の表示形式
2019年2月の時点で、テキスト広告の表示はモバイル検索に限られるようです。 広告枠は、YouTube の検索結果の最上部に最大2枠掲載されます。
上記のスクリーンショットでは画面の下部をカットしていますが、通常のスクリーンサイズであれば、最大で ATF(Above the fold)の半分弱を、テキスト広告が占めることになります。(筆者の環境では、ATFは広告2枠、オーガニック3枠になりました。)
なお、広告表示オプションは、現在のところ YouTube上では展開されないようです。
YouTubeの検索パートナー化によって、どのような影響があるのか
一般的には、YouTubeは世界第3位(あるいは第2位)の検索エンジンといわれます。
以下は、Jumpshot と Moz が2016年10月に実施した調査結果の抜粋です。YouTube は検索数の多いプロパティとして、第3位に入っています。(Google画像検索が圧倒的なシェアの2位というのも衝撃ですが…)
参考リンク:
上記の調査は、サンプルに iPhone およびモバイルアプリ経由の検索数を含まないことや、PinterestやTwitter、Baiduといった主要プレイヤーが最初から集計の範囲外になっているため、対象のプロパティを変更した場合はまた違う結果になる可能性はありますが、いずれにせよ、YouTubeは、いわゆる主要検索エンジンとみなされている Yahoo! や Bing を抑えて堂々の3位(3.71%)に位置しています。
この 3.71% という数字はシェアとしては小さいように思えますが、多くのユーザーがモバイルアプリ経由で YouTube にアクセスしているだろうことを考えると、ブラウザのみで集計されているこの結果は現実よりもだいぶ過小報告されており、実際はもっとシェアが大きいと見るべきでしょう。
YouTube は、Googleファミリーになってから既に12年以上が経過しています。動画配信サービスとして寡占的な地位を占めるにともない、Google のユニバーサル検索に含まれる動画の大多数も YouTube でホストされているものになっていきました。近年は Google広告に動画キャンペーンが追加されシームレスに動画広告が配信できるようになり、現在ではアクションキャンペーンによるリンク先へのトラフィック強化が鮮明に打ち出されるなど、検索と動画という2つの巨大プラットフォームは、それぞれのサービス拡大とともに、相互の関係性を強くしていくことも同時に模索してきた12年間だったと言えます。
今回の Google検索パートナーとしての YouTube 採用は、Google広告を利用して、動画の巨人が持つ資産の活用幅を一層拡げていくような試みです。狭義の検索エンジンは Google の専有市場となってしまったこともあり、これまでは(一部の国を除いて)パートナー経由のトラフィックは頭打ち感があったように思いますが、最も大きなパートナーである YouTube が追加された今後は、一転して増加が見込まれる可能性が高いと考えられます。
広告配信側から要望が出てくる可能性も
検索パートナー経由の配信量が大幅に増えるようになると、ひとつ大きな課題として挙がってくるのが、検索広告のパートナーコントロールです。
現在の検索パートナー配信は、広告主に設定上「オン/オフ」の権利しか与えられておらず、ディスプレイと違ってパートナー(≒プレースメント)の選択や入札の強弱も実行できません。配信量が少なかったこれまでは大きな問題にはならなかったものの、もし急激にパートナー経由の配信量が上昇することがあれば、平行して広告主から「検索パートナー配信のコントロールの強化」についての要求が増えることが考えられます。
配信に一層の透明性が求められている現在、パートナーのインプレッションシェア次第では、Google側も広告主側の要求を無視できなくなるでしょう。
今後のパフォーマンスの変化に注目
YouTube はここ数年、動画の開始前(あるいは途中)に挿入されるインストリーム型の広告モデルに注力してきました。反面、検索結果等に表示されるディスカバリー型の広告は相対的にイノベーションが停滞していたようにも見えます。
今回の対象となる広告枠は YouTube の検索結果であるため、枠としてはディスカバリー型の広告と重なります。動画広告だけでは需要(YouTube内の検索クエリ数)に対して供給(入札される品質の見合う動画広告)のバランスが取れない状況が続いていたため、今回のパートナー追加で RPM の向上、つまりは売上の補完をする必要があったということではないかと想像できます。
もしそうだとすれば、YouTube が Google広告の検索パートナーでいる期間は、しばらく続くのではないでしょうか。
巨大パートナーの追加によって検索広告のパフォーマンスに変化があれば、それに合わせた機能の追加や、運用のスタンダードが変わってくることも予想されます。パートナー経由のパフォーマンスがどう変化していくのか、時折確認してみるのもよいかもしれません!
コメント