※この記事は、2014年1月15日にUnyoo.jpに公開された『FacebookとGoogleがしのぎを削る動画広告市場の変遷』を加筆修正したものです。
Facebookの動画視聴ボリュームは急伸
Facebookが2015年1月7日に発表したFacebook内での動画利用動向をまとめたレポートによると、ニュースフィード上に表示される動画のボリュームは、2013年末から2014年末の1年間で約3.6倍に増加し、ユーザー1人当たりの動画の投稿件数は75%も増加しているとのことで、この1年での動画の利用は急速に進んできていることが強調されています。
それは市場規模にも徐々に現れてきています。2014年11月に発表された comScore(以下のグラフはeMarketer)のVideo Metrix によると、アメリカの動画視聴者の数は引き続き YouTube がトップに位置しているものの、
"Facebook in particular is coming on strong and has the potential to put pressure on YouTube"
(特にフェイスブックが力強く、ユーチューブにプレッシャーをかけられる位置にいる)
と書かれているとおり、Facebookの猛追が指摘されています。
元データ:comScore Releases October 2014 U.S. Desktop Online Video Rankings
視聴者数の変遷は、新しく投稿される動画の差にも現れています。ソーシャルメディア関連マーケティングを手がける Socialbakers によると、Facebook や YouTube などの動画プラットフォーム上に自社のブランドページを持つ企業が投稿する動画の件数は、2014年の11月に初めて Facebook が YouTube を超え、その差が急激に広がってきていると発表しています。
Facebook のCEO マーク・ザッカーバーグは、昨年の11月に "In five years, most of Facebook will be video(5年以内にフェイスブックの投稿は動画ばかりになるだろう)" と発言したこともあり、2015年以降の動画マーケットは Facebook が最右翼だと目されています。
増え続けるデータ量への対処
一方で、動画によって大幅に増加するデータ処理やサーバコストへの対処は、プラットフォーマーとして生命線になります。Facebookは2015年1月8日、動画の容量を品質を落とさずに圧縮するサービス「QuickFire.TV」を提供している QuickFire Networks の買収を発表し、動画コンテンツの転送やサーバコストを大幅に削減できる道筋を立てました。
1日10億回を超えるともいわれる動画再生の環境を保持し、2014年の3月から開始した動画広告を通じた収益基盤を強固なものにするために必要な買収だったと思われます。
Facebook は 2015年の最初の1週間で既に2件(もう1つは自然言語処理のWit.ai)の買収を発表しており、矢継ぎ早にモバイルや動画を前提にしたインフラ強化への手を打っていることが伺えます。
以前も触れましたが、ベンチャーキャピタルの AGC Partners が発表したレポート『AdTech M&A in 2014 and Beyond: Trends and Drivers in an Evolving Landscape』によると、2014年の動画広告市場は非常に活発で、M&A の件数も2013年対比で約2倍になったとのこと。そのハイライトは、やはり Facebook による LiveRail の買収だったと思います。
これまでテレビなどのオフラインに投資していた大手広告主も動画のモバイル視聴による効果測定や広告展開に可能性を感じており、動画を試聴するユーザーも劇的に増えていることから広告主側のモメンタムもついてきていることで、Facebookを始めとした動画関連プレイヤーの積極的な投資を後押ししていると考えられます。
動画広告の市場の今後
動画広告市場はモバイルに次いで成長率の高い分野だと目されているため、2015年も投資は引き続き集めていくのではないかと思います。Business Insider の調査によれば、ユーザーの伸びだけでなく、動画広告の平均CTR は1.84%とあらゆるデジタルフォーマットの中で最も高いことや、静止画の広告と違い様々な指標をトラッキングできるなど、広告のフォーマットとしての期待値もこれまでの広告フォーマットより高いことが特徴です。
2014年までは、YouTube は明らかに動画市場での圧倒的覇者でした。動画の投稿件数も試聴回数も他の動画ネットワークを圧倒的に上回っており、動画と言えば YouTube という認識が大勢を占めていましたし、2015年の現在もそうだと思います。
動画広告においても、動画広告市場全体の約2割が YouTube だと言われています。下記のグラフは2014年の9月に eMarketer から発表されたものですが、動画の覇者はYouTubeであり、広告費の伸びは鈍化するものの引き続きナンバーワンのシェアを維持すると予想されています。
一方で、これまで伝えてきたとおり、Facebook の動画配信は圧倒的な速度で成長しています。今後の動画広告向けの商品開発やインフラの改善が進んでくれば、eMarketer の予想が外れる可能性もあるでしょう。
2015年に本格化するであろう動画市場における巨人たちのつばぜり合い、引き続き注目していきたいと思います!
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