コンバージョンの向上は、特にウェブのプロモーションに関わる人にとっては永遠のテーマです。これまで多くの記事や知見が存在するものの、実際の施策ではそれぞれの場面で千差万別の事情があるので、なかなか細部の一般化が難しいテーマでもあります。
結局のところ、最後は自分でやってみることが一番大事なのは間違いありません。試行錯誤を繰り返し、自分たちなりの経験値をためていくことが改善への近道です。一方で、試行錯誤の繰り返しが常にできるわけではありませんし、できれば事例をたくさん知りたいというのも本音だと思います。
そこで今回は、コンバージョン向上施策の中でも、ランディングページやサイトの構成・表現について、自分たちでやってみた結果を仔細に紹介し知見を分けてくれるという、とてもありがたく参考になる記事を3つほどピックアップしてご紹介します。
1. 明らかなのに見落とされているLPテストの3つの要素
まずは、KISSmetrics のこの記事から。
3 Obvious but Overlooked Elements to Test on Your Landing Pages – Right Now!
http://blog.kissmetrics.com/3-overlooked-elements/
タイトルを日本語に訳すと、「明らかなのに見落とされているランディングページのテストにおける3つの要素」という感じになります。
この記事は KISSmetrics の中の人ではなく、contentverve.com というブログを運営する個人事業主のMichael Lykkeさんの記事なのですが、自らをテスト狂と評しているだけあって、いわゆるA/Bテストなどのノウハウを多く持っているようです。
ここで言う「3つの要素」とは、以下の3つになります。
1. 行動喚起(Call-To-Action)の位置 -The placement of your call-to-action
2. ボタンの表記 -Your button copy
3. ランディングページの情報量 -The amount of information on your landing page
まず、「1. 行動喚起(Call-To-Action)の位置」です。Call-To-Action(以下CTA)は日本語訳が難しいですが、行動を促すための仕掛けという位置づけが近いでしょうか。一般的にフォームやボタンなど、アクションが必要な場所やそれを促すための売り文句は画面上部のAbove the fold に位置するのがランディングページのセオリーとなっていますが、この記事では必ずしもそうではなく、ページの複雑さとCTAの位置は相関関係にあるとしています。
このような感じで、縦にCTAの位置、横に製品やサービスの複雑さを取った場合、伝えるべきものが複雑であればあるほど、アクションは内容を理解してから促す、つまりページの下部にした方が結果がよいということのようです。
これは忙しい人向けのレシピのニュースレター購読を促すランディングページですが、サービス自体にやや説明が必要なものだったため、CTAである購読フォームを右上から記事下に移動させたところ、コンバージョンが304%増加したそうです。
続いて、「2. ボタンの表記」です。これは言われなくても分かっとるわという声が聞こえてきそうですが、明らかで当たり前すぎるがゆえに、見落としがちなポイントの代表格だといえると思います。
この2つの事例を見ても、ボタンの表現によって40%ほどアクション率が変わってくることが分かります。
ボタンというのは、単なるアクションではなく、ユーザーの期待を同時に運ぶものですので、コンバージョンした際に提供できる価値とシナリオに沿った適切で関連性の高い表現を選択すべきですね。
最後に、「3. ランディングページの情報量」ですが、これもCTAの位置と非常に近い話です。
下の事例では、ジムの入会フォームのようなシンプルなオファーの場合は、1ページですべて収まるようにしたところコンバージョンが11%改善し、家庭のエネルギー調査(アメリカだと電力の事情が日本と違うのでこういった効率化の調査市場があるようです)のような分かりにくく専門性が必要なサービスの場合は、スクロールしても懇切丁寧に説明することによってコンバージョンが63%も増加したそうです。
筆者は、ランディングページを改善するためには以下のような問いかけが有効だと言っています。
「もし自分だったらコンバージョンするか?そのためにこのページで何が知りたいか?」
「背中を一押しする重要な情報、例えばインセンティブや付帯条件などを見落としてないか?」
「顧客の不安や不満を和らげるポイントはないか?」
日常業務に埋もれていると、どうしても数字ばかり見て人を見なくなりがちですので、「自分だったらどうか?」という視点は当たり前ですが、とても大事ですね。
2. 最適化に終わりはくるのか? Crazy Egg が510%も伸びた理由
続いて、私も個人的に大好きなブログ、Conversion Rate Experts の記事です。この記事は、ここまで出して大丈夫なのかと心配になるほど詳細で具体的なコンバージョン改善の事例になっています。とても良記事なので、ぜひ原文でご確認下さい。
Does optimization ever end? How we grew Crazy Egg’s revenue by 510%
http://www.conversion-rate-experts.com/crazy-egg-case-study/
この事例の対象はCrazy Egg(以下CE)というヒートマップを売りにしているアクセス解析ベンダーで、コンバージョンの改善を行うにあたって、以下のような課題に焦点を当てて改善を進めたようです。
1. ヒートマップがどのようなもので、どうやってそれを作成するのか分かっていない訪問者が一定数存在した
2. 多くの製品と同様に、価格が疑問視されていた
3. アナリティクスの「サイトのデータを表示」レポートと変わらないのではないかと思われていた
4. 競合のツールより機能が少ないのではないかと思っている訪問者もいた
A/Bテストはやるなら本気で:
これらの問題を解決するためにCEが取ったアプローチは、ユーザーの疑問に答えるため、とにかく丁寧な比較と説明を行うことでした。
左側が改善前のページで、右側が改善後のページです。情報商材か!というぐらい縦に長いページになっています。 製品の複雑な差異を説明するためには、スクロールなしで完結するシンプルなページではなく、情報量を極力増やすという、KISSmetrics の事例にも通じるものがありますね。
実際にはいきなり変えたのではなく、Google のウェブサイトオプティマイザー(現コンテンツエクスペリメント)を利用してA/Bテストを行い、改善後の長いページの方が30%ほどコンバージョン率に差が出たので、本導入を決めたそうです。
同じメッセージを違うやり方で:
テキストだけではなく、情報量の多い動画も活用したようです。
動画のある場合とない場合でA/Bテストしたところ、動画がある方が64%もコンバージョン率が高かったそうです。なお、動画は Demo Duck という制作会社に依頼し、Wistia でホスティングしたとのこと。分析しやすいですしね。
チャンスは1回:
セールスドライブのためには値引きはとても魅力的ですが、濫用は自滅を招きます。CEでは1回きりのオファーをすることによって値引きのメリットを最大限に引き出しました。
既存顧客に対して、通常の毎月契約ではなく年間契約すると40%の割引きになるというオファーを「今回限定」で行うことによって、25%の顧客が新たに年間契約にサインアップしたとのこと。ちなみに40%の割引きというのは月契約の顧客の離脱率から逆算すると売上の総額はプラスに働くとのことで、このワンタイムオファーは売上の増加に直接的な効果があったそうです。
エントリーフォーム最適化:
フォームの改善というのは、LPOでは最も多く語られる部分のひとつですが、当然ながらCEでも手を入れました。以下の画像を見てもらえれば一目瞭然ですが、コンバージョン率は約2倍の116%増だったようです。
このページはフリートライアルのフォームですが、ユーザーの多くがフリートライアルにクレジットカードの情報がいるのか疑問視している状況が分かっていたので、トライアル期間は課金しないことなど、安心を強調するフォームに変えたそうです。
なお、フォームの改善には Qualaroo を利用したとのこと。Qualaroo は今年(2012年)の7月にKISSinsights が買収されて名前が変わっていますね。フォームの離脱率などを詳細に解析して、どこでユーザーが迷っているかを分析できるツールです。
上記の事例はレポートになっていて、Conversion Rate Experts のニュースレターを購読するとPDFになったものがダウンロードできるそうです。
3. コンテンツエクスペリメント入門編(108のチェックリスト付き)
最後も、同じConversion Rate Experts の投稿です。
Google Analytics Content Experiments 101
http://www.conversion-rate-experts.com/cro-tips/
これはもともと約3年前の2009年にポストされたウェブサイトオプティマイザーの入門記事だったのですが、付帯記事の「A list of 108 ways to increase your website’s profits (ウェブサイトの収益を増やすための108の方法)」が有名になり、今でも時折コンバージョン最適化系の記事で引用されています。
さすがに108のチェックリストをすべて訳すのはとても大変なので、ぜひ原文をご覧頂ければと思います。単なるチェックリストに留まらず、各項目にかんたんな解説が付いていて、とても読み応えのある記事です。
「売上が頭打ちになったけどどうしよう」「クライアントの成果が伸び悩んでいる」「リニューアルしたいんだけどどうしようかな…」といった時に、読み返すときっとヒントが見つかると思います。
みなさんのご参考になれば幸いです。
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