伸び続ける商品リスト広告(PLA)
以前から何度かご紹介していますが、Google の商品リスト広告(PLA)はすごい勢いで伸びています。
ショッピングデータフィードサービスを行う CPC Strategy の調査によると、2013年1−3月期では、Shopping.com や Amazon Product Ads などのショッピング検索エンジンは PLA の約半分ほどのトラフィックを誇っていたものの、2013年4−6月期では、いずれも PLA の3分の1以下にまで落ち込んでいるとのことです。これは、他が凋落してきたのではなく、PLA の伸びが他を圧倒しているからだと言えます。他の検索エンジンがまったく追いつけないスピードで成長しているようです。
リンク:
Report: Google PLAs Dominate CSE Channel Like Never Before [CPC Strategy]
検索連動型広告と PLA はカニバるのか?
これだけ PLA が伸びてくると、検索連動型広告(PPC)とカニバってしまうのでは?という懸念がムクムクと浮かび上がってきます。PPC でも以前から、常に特定のキーワードでオーガニックが1位のサイトが「PPC で同キーワードに入札する意味はあるのか?(広告を止めたらオーガニック経由のトラフィックが増えるのでは?)」といった、効果のカニバリゼーション(共食い)についてよく議論になったものでした。
PPC とオーガニックの関係は、品質スコアの説明でも有名な Hal Varian のチームが400以上の事例を元に「Search Ads Pause Studies」として研究結果を2011年7月に発表しており、PPCとオーガニックはほとんど共食いしないことが証明されています。つまり検索連動型広告をやめればオーガニック経由のトラフィックが増えるということでは残念ながらなく、それぞれ純増/純減の関係にあるということです。
参考:
Studies Show Search Ads Drive 89% Incremental Traffic
では、PLA に関してはどうでしょうか。
PLA は、商品の画像、名称、価格、企業名などの商品情報が Google の検索結果に掲載される広告です。Google の検索結果画面上という意味では検索連動型広告と表示面積を取り合う仲で、オーガニックとは違って必ず掲載結果の above the fold (ファーストビュー)にあります。広告表示のためのオークションは通常のAdWords とは区別されているものの、検索結果の一等地同士なので、カニバリゼーションが起きていてもおかしくなさそうです。
そこで、少し前の記事ですが、実際にカニバっているのかどうか調べてみた記事が Search Engine Land に載っていたのでご紹介したいと思います。
参考:
PLAs: Cannibals? Allies? Or Both?
オンラインエージェンシーの RKG の共同創業者である George Michie は、500社の自社のEコマースの顧客のデータを調査し、通常の検索連動型広告(Text ads)と商品リスト広告(PLA)のCTRを比較して、「ちょっとカニバってると思う」と結論づけています。
検証の流れとしては、まず、Text ads と PLA の CTR の推移に大幅な違いがあることからはじまります。下の図では、PLA が本格化した2012年以降 PLA の CTR は大幅に上昇している一方で、Text Ads の CTR はそれに反比例するかのように微減傾向にあることが示されています。
その Text Ads の CTR を、1位〜3.9位と4位以下でプロットしなおしてみたのが以下の図です。上位掲載では CTR の減少幅が大きく、下位ではあまり変動がないことが分かります。PLA の掲載は常に Above the fold だと考えると、Text Ads の上位ほどカニバリが発生している可能性が考えられます。
続いて、昨年同月比での図に直してみると、PLA の伸びがはじまった2012年1月以降から、Text Ads の CTR の減少が続いていることが分かります。
同じ表を Text Ads だけでプロットし直してみても、上位の広告ほど減少幅が大きいことが分かります。
これらの結果を元に、George は「カニバリゼーションは起きている」としています。 PLA が伸びるほど、Text Ads の効率は悪くなるということです。
一方で、この記事では、一般的に考えられるほどカニバリゼーションは悪ではなく、あるチャネルが他のチャネルを100%飲み込んでしまうような事象というよりは、以下の図のようにそれぞれの一部がオーバーラップしているに過ぎないので、カニバリゼーションの回避に重きを置き過ぎると正しい判断ができなくなると警告しています。
確かに、PLA が実際に表示されるクエリはコマーシャルクエリに限りますし、PLA が表示されないEC以外の業界ではカニバリゼーションは起きません。カニバリが起きるからといって PLA を辞めてしまっては、機械損失が拡大するため本末転倒になってしまうでしょう。
EC以外の業界でも、ナレッジグラフやユニバーサルサーチの影響によって検索結果は常に変化しています。自社にとって有利不利を考えるのではなく、ユーザーにとってどうすれば利便性が高まるかを考える方が、PPC にせよ PLA にせよ、建設的な改善に向かうのではないかと思います。
変化が常套化するプロダクトフィード広告
一方で、2013年8月現在、北米では以下のキャプチャのような、矢印を押すとオーガニックがまったく見えなくなるほど PLA がエクスパンドするテストが行われているため、これが本格的に実装されると、さらにEコマースの PLA 依存が高まってくるのではないかと懸念されています。これはたしかにすごい。参考:
Google Tests 16 Product Listing Ads On SERP: What Online Merchants Should Do - CPC Strategy
予算規模の小さなEコマースでは既に PLA がアカウント全体の半分以上の予算を占めているケースも出てくるなど、商品データの広告利用は重要さを増していく反面、それだけに依存しないプランBを考えておくことが中小のEコマース担当者には求められてくるでしょう。
前回のポストでも思いましたが、PLA はまだ利用が本格化して2年足らずにも関わらず、急速に発展を遂げ、仕様変更等のスピードが非常に早いことからも、今後も大きな仕様変更を繰り返しながら成長が続いていくと考えられます。
ダイナミックリマーケティングや Criteo の登場も追い風となって、商品データが広告に結びついていく環境はもはや普通になりました。とはいえまだまだ費用対効果が比較的計算しやすい広告のため、ショップのサイズに関わらずトライして損はないでしょう。
引き続きプロダクトフィード関連の話題は随時ウォッチしながら、しつこく紹介していきたいと思います!
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