「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。
第3回は、第三者配信アドサーバの「digitalice」やタグマネジメントツール「TagKnight」などを中心に、アドテクノロジーの分野で革新的なリリースを続けている企業であるFringe81のデジタルコンサルティング事業部で活躍されている渡辺康太郎さん・長谷川充さんのお二人に、運用広告の現在についてお伺いしました。
# インタビューは 2013年3月某日に行われました。
「大航海時代なので一緒に船に乗らないか」
渡辺さん、長谷川さん、それぞれの現在のお仕事内容と、今の職種に就かれることになった経緯を教えていただけますか?
(渡辺)現在はFringe81のデジタルコンサルティング事業部でチーフストラテジストとして、組織の品質管理・チームマネジメントや教育に携わっています。Fringe81へは2006年、現在の会社の前身である「RSS広告社」時代に入社しました。入社のきっかけは、社長の田中に「これから大航海時代が来る。一緒に船に乗らないか?」という熱いキラーフレーズで口説かれて、そのまま勢いで、コールセンターのセンター長からネットの海に飛び込むように転職しました(笑)。気付けば早いものでもう7年経っていますね。
これまでは、現在も主幹事業であるRSSのアドネットワーク「Trend Match」や、クリエイティブオプティマイゼーションの「iogous」 の立ち上げを行なってきました。「Trend Match」については事業部長を務めていた時期もありましたが、考え抜いて作ったメニューがパートナー企業の方々に支持されて自社の収益の柱に成長させることができたのは私の誇りです。
(長谷川)私は、渡辺と同じくデジタルコンサルティング事業部でストラテジストをしています。2012年度に新卒としてFringe81へ入社しました。就職活動で面談を重ねていくにしたがって、社員の魅力というか、この人たちと一緒に事業を大きくしていきたいという思いが強くなっていったことが入社の直接的な動機です。
当初は特にインターネットや広告を業界として志望していたわけではなかったのですが、説明会のときから「この会社の雰囲気が自分に合っている」という予感がしていて、それは具体的には「着飾らなさ」とか「挑戦する気概」のような表現になるのですが、入社して1年が経った今でも、あの時の感覚は間違ってなかったと思っています。卒業前からインターンを始め、入社後しばらくの間は営業で勉強させていただき、2012年の夏から現在のストラテジストです。
(渡辺)デジタルコンサルティング事業部は、シンプルに言えばお客さまの課題解決を行う事業部です。提供するプロダクトやサービスは自社のものに限らずお客さまの課題を解決できるものであれば何でも扱います。単なる広告枠の販売ではなく、DSPを主軸としたディスプレイ広告や第三者配信「digitalice」の運用、AdWordsなどのSEM周りのPDCAサイクルが回せるプロダクトを中心に、見えない課題を発見し、解決に導くことを目的に日々仕事をしています。
Fringe81のビジョンは、「新しい発見を提供し、物事の見方を変える。」です。お客さまの課題やボトルネック、データから見えてくるUSPなどを発見して、新しい視点を提供していくことがデジタルコンサルティング事業部の仕事なので、まさに我々は会社のビジョンを体現している仕事をしていると思っています。
当たり前のことを、当たり前にやり切ろう。
Fringe81としての「運用型広告」への取り組みの特徴についてお聞かせ下さい。
(渡辺)Fringe81として「運用型広告」への取り組みは、大きく分けて2つあると考えています。
1つ目は、「技術がある」こと。
2つ目は、「当たり前のことをやり切る」ことです。
「技術がある」というのは、具体的には第三者配信アドサーバの「digitalice」、2013年2月から提供を開始している「TagKnight」などの最先端のシステムを自社提供できるということです。
技術力・開発力があるので、新しいシステムやツールが世の中に登場してくるのを待つのではなく自分たちで作って提供できるので、これまでより素早くお客さまのご要望に応えられますし、これまでできなかったことができるようになるサイクルを早めることができます。
次の「当たり前のことをやり切る」というのは、「技術」「アドテクノロジー」という言葉から連想される無味乾燥・効率重視といった印象とは真逆のものですが、我々の存在価値の根幹です。
弊社へは「最新の技術を活用した運用をしてくれ」といったご相談をいただくことが多いのですが、実際にキャンペーンの内容や運用体制を拝見すると、タグが貼り漏れている、バナーのサイズが1種類しか入稿されていない、一度入稿したらCPCの調整程度しか動かしていないなど、最新の技術以前にまだまだやれることがたくさんあるんじゃないかというケースに遭遇することがあります。
このような、最先端のシステムが次々と世の中に登場している一方で現場が追いついていない、という問題は我々にご相談に来てくださるお客さま以外でも頻繁に起こっていると思っています。いくら最新の技術があっても課題設定・運用設定・運用実務が雑では宝の持ち腐れですし、時に致命的なミスにつながりかねませんので、我々はデジタルマーケティングの基本的な部分を泥臭くしっかりやっていくことで、現実を理想に近づけていく作業ををしっかりやろうというのが「当たり前のことをやり切る」という取り組みです。
ちなみに弊社ではこれを「ABC理論 (当たり前のことを バカにしないで ちゃんとやる)」として標榜しています(笑)。「当たり前の基準」の品質には徹底的に拘りますが。
ABC理論を実践していくために心がけていることはありますか?
(長谷川)デジタルコンサルティング事業部の風土として、教育と責任が徹底されています。TATEITOさんが提供されているような社外研修への参加もサポートしてくれますし、私のようなキャリアがまだ浅い人間にも仕事を任せてくれます。
現在、非常に大きな扱いのあるお客さまを担当させていただいているのですが、最初は「えっ、こんなに任せてくれるん?」という感じでした(笑)。一方で、決して投げっぱなしではなくフィードバックを繰り返す体制を作ってくれました。仕事を任せてくれるということは当然ながら同時に責任も伴いますので、正直言って最初は不安でものすごいプレッシャーですが、キャンペーンの構築やレポーティングなど、考え抜かなければならないところでは都度都度先輩や上司が壁打ちの相手になってくれて、意見をぶつけ合うことができました。結果的にそれが質の高いアウトプットにつながり、お客さまといい関係を築けるきっかけになったと思います。
とはいえ、やはりプレッシャーはキツかったです。当初は思ったような結果が出なく辛い時期もあったのですが、私が担当になったことで会社の評価を下げるわけにはいかないので、本当に死に物狂いで仕事をしました。私の担当しているお客さまはとにかく高速でPDCAを回していくことを求められていたのですが、先方の求める仮説検証のスピードについていくことで、過去最高の結果を出すことができています。
(渡辺)先日あるキャンペーンが無事に成功した際にそのお客さまからメッセージを頂いたのですが
おかげさまで過去最高の実績になる予定です!
みなさま(特に長谷川さん)、ご協力ありがとうございます!
という言葉が印象的でした。長谷川が褒められているのですが、私まで嬉しいというか。
以前は私ひとりで全部やろうとしていた時期があったのですが、それではチームが成長しないしダメだと思って、現在の「信じて任せる、でも最大限サポートする」というスタイルに切り替えました。まずは自分で考えてもらって、出てきたアウトプットに対して、それを磨き上げるようなアドバイスを心がけています。
組織をスケールさせるには定型業務のマニュアル化を進めていくことがひとつの考え方としてあると思いますが、我々としては、個々のメンバーが考えて、自分の経験として獲得していかないと、当たり前のことをちゃんとやれる組織にはならないと思いますし、この変化の早い時代に生き残ることはできないと思っています。
可視化されてないものを探り当てるのは、人間の仕事。
広告運用をしていく上で、面白さや難しさを感じるのはどんなときでしょうか?
(長谷川)私自身は、運用型広告を扱う上では、経験やノウハウを持っている組織が勝つと思っています。これからますます自動化が進む中で、運用者には事務作業ではなく考えるところに時間を割くことが求められてくると思っています。莫大な量のデータをクリーニングして、ボトルネックや新しいセグメントを発見するようなところが価値になっていくのかなと。だからこそ、データの中にもぐっていって、「これだ!」という活路を見出せたときは非常に面白さを感じますし、同時にこの部分が一番難しいとも思います。
運用者がお客さまと対面して仕事をすることは一般的には少ないと思いますが、デジタルコンサルティング事業部は「何が何でもとにかく顧客」というスローガンを掲げており、業務が作業にならないように、社内の営業の顔色を伺うんじゃなくて、お客さまを常に見続けること。そこを間違わないようにしています。
(渡辺)営業はお客さまに訪問し、オペレーターやストラテジストはキャンペーンの設計や運用を行いますが、分業の利点としてオペレーションでのノウハウ蓄積や最適化に力をかけられる一方で、社内でのコミュニケーションには気を使っています。運用側が営業をお客さんのように見てしまうとダメで、長谷川の言うとおり、本当にこの進め方でいいのかちゃんと議論しろと伝えています。その雰囲気を作れるようにするのも仕事ですね。例えば、定期的に「お客様課題会議」を営業・ストラテジストを含めて合宿形式で1日時間をとり、共有を行っています。
面白くもあり難しくもあるのは、この仕事は自動化だけでもダメだし、マニュアル作業だけでもダメで、そのバランスが事業の成長に関わるということです。可視化できたり数値化されているものを処理するのは機械の方が得意ですが、可視化されてないものや数値化しにくいものを探り当てるのは人間しかできません。
私はこの仕事は宝探しのようなものだと思っていまして、例えば洞窟で宝物を探すとして、金属探知機のようなツールは宝探しには非常に便利だけれども、その金属探知機を使うのは人間なので、「ここに宝が眠ってそうだ」という経験則や「金属探知機の正しい使い方」といったスキルが備わっていないとツールは意味を成しませんし、金属探知機を使わないと宝物を掘り当てるまでに非常に労力を要するかもしれない。どちらかがあればいいという話ではなく、両方必要です。
金属探知機もそれを使う人も、どちらも備わっているのがFringe81だと思っていますし、そこがブレていないのが仕事をしていてやりがいを感じる部分です。
色んな企業さんと仕事をしていきたい。
2013年はどのような年になると思いますか?もしくはどういう年にしていきたいと思いますか?
(渡辺)ビジョンの話に戻りますが、「新しい発見を提供し、物事の見方を変える。」という、まだ見えていないものを見える化して新しい視点を提供するという仕事はまだまだ発展途上ですので、それをやり抜いていきたいと思っています。
例えば、先日あるミュージシャンのキャンペーンを運用させて頂いたのですが、普通にコンバージョン率が50%くらい出ました。コンバージョンポイントはチケット予約です。普通はどんなに最適化してもコンバージョン率が50%に届くなんてことはないので、これは明らかにアーティストの持つブランドの力が大きいのですが、キャンペーンの設計や運用に際しては、どうしてもそのブランドという見えないものを最初から考慮することが難しいです。ブランドを可視化して、その影響を踏まえた上で運用の仕掛けを作れたら、未来がもっと拡がるはずだと思っています。本領域をアトリビューション等でも解決・実行できれば嬉しいです。
(長谷川)個人的には、今の渡辺さんのポジションを奪うのが目標です(笑)
(渡辺)え…、追い出されちゃうの? しかも年内に?(笑)
(長谷川)年…度内なので、あと1年ですね…(笑)。
もとい、運用チームをまとめられる人材になりたいと思います。今はお客さまの前に出ないと「ただの運用者」みたいに見えているかもしれませんが、今より半歩くらい前に踏み込んで、キャンペーンの陰に日向に、長谷川というストラテジストが活躍しているということを認識してもらえるような仕事をしていきたいです。とにかく、名前負けしないように頑張っていきます。
最後に「これだけは言っておきたい」ことがあればぜひ
(渡辺)広告主さん、パートナーさんに限らず、「この分野、このデータに可能性を感じているんだけど」といったご要望や期待、課題を感じてらっしゃる企業さんとは、ぜひ一緒にお仕事をしてみたいです。一緒に何かを開発したり、価値をつくり出す面白さを共有できればと思っています。お声掛けお待ちしています!
(長谷川)デジタルコンサルティング事業部は絶賛人材募集中なので、もしご興味ある方は是非ご応募下さい!
Fringe81株式会社
http://www.fringe81.com/
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