#あけましておめでとうございます。2013年もよろしくお願い致します。
例年、年末年始は前年の振り返りや翌年の予測記事などが増えますね。海外でもおおよそ2013年のオンライン・マーケティング市場の予測記事が出揃ってきましたので、それらの記事にある共通項を(独断と偏見で)見つけ出し、2013年のトレンドをさぐっていきたいと思います。
なお、ふだんからチェックしているメディアだけでも非常に多くの2013年予測系記事がありましたが、今回参考にしたのは以下の5つの記事です。
Online Marketing: Top Trends for 2013 | adexchanger
http://www.adexchanger.com/data-driven-thinking/online-marketing-top-trends-for-2013/
2013: The Year of Marketing Integration | Search Engine Watch
http://searchenginewatch.com/article/2232621/2013-The-Year-of-Marketing-Integration
Be A PPC Leader in 2013: 5 Top Trends | Search Engine Watch
http://searchenginewatch.com/article/2232355/Be-A-PPC-Leader-in-2013-5-Top-Trends
10 Digital Marketing Predictions for 2013 | ClickZ
http://www.clickz.com/clickz/column/2233500/10-digital-marketing-predictions-for-2013
Eight Digital Trends to Watch in 2013 | Adweek
http://www.adweek.com/news/technology/eight-digital-trends-watch-2013-146070
予測1. モバイルの完全な離陸
「いまさら...もう聞き飽きたよ...」という声が聞こえてきそうですが、スマートフォンの急激な浸透は誰しもが頭では理解している一方で、マーケティング利用側(企業側)が感じているスマートフォンの影響度は体感温度に差があるようです。モバイル対応は制作も計測も運用もコストがこれまでよりかさみますので、スマートフォンやタブレット端末によって情報接触の態度やタイミングが多様化したことで、企業側のキャッチアップが困難になっているのは事実ではないでしょうか。ただし、さすがに2013年はもう待ったなしのようです。業界や企業によってたいぶ差があると思いますが、Adobe Marketing Cloud のデータによると、2013年末には全トラフィックの3分の1はモバイルもしくはタブレット経由になるだろうとのこと。
また、約1年前(2012年1月)にeMarketer が出したモバイル広告の成長予測でも、2012年は前年比80%増、2013年でも65%増と高い成長率が見込まれており、2012年末には検索連動型広告の全広告費の25%がモバイル経由という予測も出ているため、Googleの広告収益の実際はその予測より高い成長率ではないかとも言われています。
ゲームなどのエンタメ系業界やアルバイト求人などの若年層向けサービスなど、モバイルに親和性の高い分野はかなり以前からモバイル優位であり、マーケティングもモバイル優先で策定されてきた感がありますが、そうでなかった他の業界においても、モバイル対策はいよいよ必須になるとどの記事でも伝えており、Search Engine Watch の「2013: The Year of Marketing Integration」という記事に至っては、
Mobile
Get on it. Now. (今すぐやれ)
と、わざわざコメントするまでもなし、といった剣幕で、モバイルの重要性を表現しています。
日本では当たり前のモバイルペイメントも北米では普及の元年となりそうです。「今年はモバイルの年」とはここ数年毎年のように言われていましたが、2013年末に振り返った際には、モバイルがいちいち仰々しく話題に登場しないほど当たり前の施策として浸透しているかもしれません。
予測2. ソーシャルメディアの計測と連携の強化
過去2−3年はとりあえずマストの対策としてソーシャルが持ち上げられる傾向にあり、それによってPinterestなどの新興系プラットフォームの登場や、多くのソーシャルメディア・マネジメントツールが現れ、一気に市場が勃興しました。これまでは、バズワードを熱心に煽る層への警鐘の意味も込めてソーシャルメディアのブームに一定の距離を置く向きもありましたが、2012年以降の分析/計測ツールの進化やアトリビューション分析の浸透に伴って、ソーシャルが売上や顧客ロイヤリティの醸成にどのように影響しているのかを可視化する動きが活発化しそうです。
先ほどのSearch Engine Watch の記事では、
No longer will marketers be asked – “Are you on [enter your preferred social media channel]?” in 2013 they will be asked – “How many leads are you getting from [enter your preferred social media channel]?” or “What is the ROI of our [enter your preferred social media channel]?”
今後は「"ソーシャル" やってる?」とは誰も聞かなくなるだろう。2013年には「"ソーシャルからどれくらい見込み顧客が来てる?"」や「"ソーシャル"のROIはどれくらい?」と聞くことになるはずだ。
と予測しています。
昨年(2012年)3月にアクセス解析で圧倒的な市場シェアを持つGoogle Analytics にソーシャル分析が加わったことも、今後のソーシャルメディアのアカウンタビリティの向上に大きく貢献するでしょう。
また、ソーシャルメディアからリードナーチャリングやCRMのシステムに繋いだり、リターゲティング広告に利用したりといった、他のチャネルと連携ができるようになるというリリースが2012年は各社から発表されましたが、その動きは2013年においてもますます増えていくと考えられます。モバイル市場の伸長や、位置情報のマーケティング利用、Facebook Exchange 等もこの動きへの追い風となると予測されます。
<参考事例:Walgreensのツイートクーポン>
Check in at Walgreens and Receive Tweet Deal Coupons [VIDEO]
http://mashable.com/2012/02/08/walgreens-coupons/
予測3. 地方/中小企業(SMB)市場の伸長
リスティングのみならずモバイルやソーシャルなどが浸透したことにより、資金面で劣る中小企業にも低コストで出稿可能な効率のよい武器が増えることとなりました。しかしながら、これらの手法はいずれもある程度の専門性や運用コストを必要とするものなので、リソースも知識もない中小企業にとってこれらを使いこなすことは至難の業です。リスティング広告ではコールトラッキングや運用代行などをパッケージ化したベンダーが欧米ではここ数年堅調に伸びており、東南アジアのような成長市場にもどんどん進出しています。Google も AdWords Express というローカルビジネス向けの簡易パッケージの正式リリースや、オープンビジネスパートナーのようなリセラー支援プログラムを推進しており、2013年は地方や中小企業向けサービスがこれまで以上に目に見えて加速していくと考えられます。
日本でも、2013年1月4日に営業を開始した株式会社ロカリオ(株式会社アイレップの100%子会社)は、事業内容を「中堅・中小及び地方企業向けデジタルマーケティングサービスの提供」と定義しており、日本でもこの動きは注目に値すると思います。
予測4. マーケティング施策の精緻化と、統合分析の本格化
チャネルの多様化やテクノロジーの進歩、消費者のリテラシーの向上によって、マーケターがデフォルトで行うべき施策の種類は増え、キャンペーンの成功のためのプランニングや運用のこれまで以上の精緻化が求められる年になりそうです。例えば動画を使ったマーケティングはこれまでイマイチ離陸した感じがしませんでしたが、2012年に動画広告向けAdWords が正式にスタートしたことによって動画を広告する手法が整備されたほか、動画の視聴をトラッキングしてリターゲティングしたり、動画DSPの登場、スマートフォンへの配信と、動画ひとつとってもいろいろと手法だけは揃ってくるので、アイデアやプランニングを実現させる運用の精緻化にフォーカスが当たるようになると考えられます。同じように、レコメンドバナーやダイナミッククリエイティブ、商品リスト広告(PLA)や動的検索広告など、データフィードを前提とした広告手法が、施策の自動化と精緻化を同時に実現させる動きを加速させると思われます。
こういった各施策の精緻化と同時に、施策の多様化によって計測すべきチャネルやポイントが増え、それぞれの施策での成果を独立して評価・分析するのではなく、マーケティング全体としてのROIを計測するニーズはより一層高まってくると思われます。2012年は統合マーケティングが声高に叫ばれた1年でしたが、2013年は、マーケティングダッシュボードを利用するような大手広告主や、トレーディングデスク機能を充実させていく大手広告会社やコンサルティング会社などを中心に、啓蒙から実践へ移行する過渡期の1年になると考えられます。
予測5. 分析系人材採用とプライバシー問題の加熱
"ビッグデータ"ブームによって、データを扱う専門人材へ焦点が当たることが増えました。LinkedInの調べによると、データサイエンティスト/アナリスト関連の求人数は2010年代に入って極端な上昇を示しています。次の10年で最もホットな職業と呼ばれているだけあって、この傾向はしばらく続くものと考えられます。一方で、"ビッグデータ"ブームはユーザーのプライバシーの問題と隣合わせです。IABがプライバシーのガイドラインを整備しているように、業界団体による調整が常々行われていますが、DMPなどの利用が本格化してくるとどうしてもプライバシーの問題に脚光が当たるため、引き続き議論は続いていくものと考えられます。
Google も2012年にアクセス解析のGoogle Analytics のデータをリターゲティングに利用できる「アナリティクス リマーケティング」を発表した際に、改めてプライバシーポリシーの記載を義務付けました。ユニバーサル・アナリティクスの発表も影響しているものと考えられます。
ディスプレイ広告主向け Google アナリティクスのポリシー - アナリティクス ヘルプ
http://support.google.com/analytics/bin/answer.py?hl=ja&answer=2700409
プライバシーの問題のみならず、昨今の広告会社やプラットフォーマーを主役とした買収や資本・業務提携により、インベントリ取引や配信コスト、マージンの不透明さも問題に挙げられることが多いため、ブラックボックスな取引形態にも透明性が求められるでしょう。
以上、海外の記事から2013年のトレンドだと思われる5つの事項をご紹介しました。
予測を語るのはとても楽しいのですが、外野で評論家的に語るのではなく、トレンドの一端を担えるように、引き続き現場を大切にしていきたいと思います。2013年もどうぞよろしくお願い致します。
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