広告のエコシステムの発展には、広告主、パブリッシャー、ユーザーという3つの関係者すべてにとってプラスになる設計と運用が求められます。3者のどれかの不利益によって他方の利益が担保されていたり、利害関係に絡めとられて三すくみのような状態になっている場合、そのエコシステムは(短期的に成立したとしても)いずれは破綻してしまうでしょう。
公序良俗の観点から好ましくないサイトに自社の広告が出てしまったり、自分の運営するメディアにおぞましい広告が出たりしないよう、広告媒体やプラットフォームには掲載基準が定められ、ユーザーの利便性を損なわないように運営がされています。
オンライン広告の巨人である Google は、2012年5月に、昨年(2011年)の1年間で、82万4,000アカウント、1億3,400万以上の広告を不承認にしたと発表しました。世界最大のオンライン広告プラットフォームを運営するGoogle が、無数の広告主が日々サインアップし日々アップロードする広告を、どのように審査し、安全性を保つ努力をしているかを説明するビデオを作成しています。
The fight against scam ads—by the numbers | Official Google Blog
http://googleblog.blogspot.jp/2012/05/fight-against-scam-adsby-numbers.html
以下を一見して分かるとおり、不承認の広告は年々その数を増しているようです。AdWords 自体が伸びていることもありますし、テクノロジーの進化による自動化の影響もあれば、スパムが増えている、審査がより厳格化しているということも言えるかもしれません。
ビデオの内容とも近いですが、年々増え続ける悪い広告(Bad Ads)を排除するために、Google がどんな審査を裏側で行なっているのかを表したインフォグラフィックも先日公開されました。これを見ると、審査に莫大な労力とテクノロジーを注いでいることがわかります。
※PDF版はこちらから入手できます。
広告側の審査と同じように、悪いサイトに広告が出ないよう AdSense 側でも以前から厳しい審査が行われています。
ディスプレイ広告はネットワークの規模が指標の一つとなりますが、コムスコア社の vCE にあるような Brand Safe (ブランド保護)の監視が切望されるほど、一部のネットワークについては残念な在庫ばかりになっている現状があります。どこかの利益を優先すれば、どこかが必ず損をします。安全性を犠牲にして短期的な利益を優先すれば、いずれは広告主は離れてしまいます。広告主が離れてオークションが機能しなくなれば、収益最大化のアルゴリズムは単なる画餅となってしまうでしょう。
広告の出稿側(デマンドサイド)にとっても提供側(サプライサイド)にとっても、ユーザーに情報が届くまでに多くの機能やプレイヤーが介在する以上、今まで以上に安全性や透明性が求められてくることは間違いありません。Google に限らず、マーケットプレイスに参加するプレイヤーそれぞれの努力によって、エコシステムが支えられていることを忘れてはいけないなあと改めて思います。
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