個人的に更新を楽しみにしているブログ、Conversion Rate Experts に、「Infographic: Nine steps to better conversions」(インフォグラフィック:コンバージョンを伸ばすための9つのステップ)という記事が載っていました。その名のとおり、コンバージョンを伸ばすためのステップが載っているインフォグラフィックが紹介してあり、ウェブサイトのコンサルティングファームである Conversion Rate Experts と、ウェブサイトの分析ツールを提供する KISSmetrics が共同で作成したものです。
マーケティングや広告に関わる人にとって、「コンバージョン」という言葉は見聞きする時と場所、文脈によってさまざまに変化すると思います。
企業の広告やダイレクトマーケティングの担当者にとってはその率や数が常に頭をもたげている喫緊の課題ですし、広告代理店にとっては成果を測る優先順位の高い指標であり、一方でそれ自体に振り回されやすい、あまり心地よくない響きのする言葉でもあるかもしれません。
言葉の定義が発する主体によって変化することも、この言葉の特徴です。ウェブマーケターにとってはチャネルに限らずウェブサイト経由での購買数を指す一方で、リスティング広告を請け負っている広告代理店からすれば、コンバージョンというのはあくまで "リスティング広告経由" という前提で使われることがほとんどです。コンバージョンの種類も、購買もあれば申込や問い合わせもありますし、問い合わせと最終的な購入までを紐付けて計測することもあれば、フォームに限らずフリーダイアルなどの電話だったりすることもあります。
世の中にはコンバージョンの向上を謳った記事があふれていますが、コンバージョン向上のための施策は100社あれば100通りのやり方があり、時期や手法、業界や規模など、前提となる環境変数が非常に多く、なかなか施策の細部を紋切り型に一般化することはできないと思います。ですので、このインフォグラフィックも個別のテクニカルな手法に焦点はあてず、どちらかというと最大公約数的な、心構えのような内容を、実行する順番に紹介しています。
心構えというのは、日々の忙しさに埋もれてしまい、自ら意識しないことにはなかなか前景化しないものだと思います。そういった意味で、この資料は(彼らのツールや手法の提灯用資料とはいえ)師走の忙しいこの時期に企業のウェブ担の方々がこれまでの施策を振り返るのにちょうどよいものだと思いました。以下、順を追って紹介します。
リンク:
9 Steps to Better Conversions - The C.R.E. Methodology
1. ゲームのルールを決める
- 長期的な目標や、成功の定義など、戦略を練ることに時間を使いましょう
- 憶測に頼るのはやめて、成果の出ていない分野は何で、なぜなのかを見極めましょう
- ウェブサイトの訪問者の思考プロセスを理解し、訪問者の身になって、訪問者の視点で自社サイトを使ってみましょう
2. 現在のアクセス状況を理解する
- ウェブサイトを鳥瞰する視座を育てましょう。訪問者がどこから来て、どのランディングページに到達し、どのように遷移しているかといったコンバージョンファネルを理解し、どこに宝が眠っているかを発見しましょう。
3. 訪問者を理解する
憶測や決めつけをせず、なぜ訪問者はコンバージョンしないのか、その理由を探りましょう。探り方は、以下の3つの考え方があります。
- これまでの顧客とは違った目的や志向を持つ訪問者の存在を理解すること
- ユーザー体験に問題がないかを確かめること
- 訪問者の不満や意見などを集めて、なぜそうなのかを理解すること
4. マーケットを知る
- 何もないところにビジネスは起こりません。競合、専門家、顧客、顧客がソーシャルメディアやレビューサイトで言っていることなど、マーケットを知りましょう。そして、自社の強みを生かし、マーケット内のポジショニングを強化するための可能性を探りましょう。
5. 自社の隠れた魅力を掘り起こす
- 見込み顧客に対して説得力のある自社の魅力は何なのか確かめましょう
- 購買プロセスの中で、見込み顧客に対してタイミングよくその魅力を提示してみましょう
- 自社の(説得力のある)魅力を集め、伝えることに時間を費やしましょう
6. アイデアを試す
- リサーチから得た仮説を試してみましょう。壮大で思い切ったアイデアは、短い時間で多くの利益をもたらしてくれるでしょう。
7. 実験可能なサイトにする
- これまでのステップをもとに、新しいページの骨組みやページエレメントを作りましょう。新しいページは、現状より説得力があってユーザフレンドリーなものにしましょう
- 新しい骨組みに沿って、複数のユーザビリティテストをしましょう。そしてどのパターンが顧客の共感を得るのか議論しましょう
8. ページ単位で実験する
- 7. で作成した実験可能なページでA/Bテストをしましょう
- チームメンバーに、このテストの目的や意義、やり方やビジネス上のゴールとの整合性、どうやって成果を測るかを理解してもらいましょう
- A/Bテスト用のソフトを利用して、どのパターンがよいのか検証しましょう
9. 他のメディアにも展開する
これまでのプロセスで得た知見を、他のマーケティング施策に生かせるかどうか検討しましょう。例えば以下のような方法があります。
- もっとも効果がよかったLPテスト見出し文章をAdWords などの検索連動型広告に使ってみましょう(逆もまた然り)
- もっとも効果がよかったLPテストのデザインをオフラインのメディアにも適用できないか模索してみましょう
- もし、ある訴求内容が効果が良かったとすれば、同様の効果が販売代理店やアフィリエイトでも適用できないか勧めてみましょう
最後に、まとめです。
資料自体がConversion Rate Experts の販促用であるため、彼らの提唱している「C.R.E. Methodology」の説明になっていますが、いいこと言ってます。基本は反復であり、以前のテストの上に、新しいテストがあり、コンバージョンの向上には以前の成功の上に実験を積み重ねることが肝要であると。これはウェブ以前のリニューアルの概念とはまったく違った考え方ですね。また、テストの後には、一度視点をミクロからマクロへズームアウトし、コンバージョンファネルの全体像に目を向けるという、木と森を同時に見るようなアプローチが重要であるとも言っています。
個人的には、6. で敢えて「Bold changes gives you more profit」と挟んでいるところに、改善が小さくまとまらないように配慮している姿勢が好きですね。
余談ですが、今回紹介した資料の作成元の一つである KISSmetrics はインフォグラフィックがとてもお好きなようで、これまでにも数々のインフォグラフィックを作っています。それらがアーカイブされているページがありますので、インフォグラフィックマニアな方はぜひご覧ください!
リンク:
Infographics from KISSmetrics
コメント